マツダCX-5試乗記㊶ ディーゼル=10年乗っても良いと思わせる魅力
- 2012-05/05 (Sat)
- マツダ
- CX-5/CX-8/CX-9
今回も、前回に引き続き、
ガソリンモデルか、ディーゼルモデルか、
どちらがおすすめかという内容の記事。
結論からいうと、ディーゼルべた褒め。
論理的な内容で、納得度の高いレポートです。
サイズに、SUVに、デザインに、
文句のない方には、最高の一台だと思います。
じっくりご覧ください。
日本人のマインドをひっくり返した!
立ち上がり1ヶ月で月間予定販売台数(1000台)の8ヶ月分を受注するという最高のスタートダッシュを切ったCX-5。しかもそのうちの73%をディーゼルの「SKYACTIVE-D」が占めるというデータには、日本にディーゼル新時代が到来することを予感させる大きなインパクトが秘められている。
マツダ「CX-5」:発売2ヶ月で年間目標を達成!8割がディーゼル!


99年に石原都知事が例のペットボトルパフォーマンス会見を開いたちょうどその頃、ヨーロッパでは乗用車ディーゼルの革命が起きつつあった。フィアット・パワートレーン・テクノロジーが基礎技術を開発し、ボッシュが商品化したコモンレール式新世代ディーゼルエンジンは「遅い、うるさい、汚い」という従来のイメージを完全に覆し、「速い、静か、きれい」という評判を確立。そこに持ち前の燃費性能が加わることで、瞬く間に欧州市場を席巻していったのである。
以降、欧州では売れるから開発に力が入る→開発に力が入るから売れるという好循環が出来上がり、いまでは50%以上の乗用車がディーゼルになった。それに対し、ディーゼルのイメージがすっかり悪くなってしまった日本は、売れないから開発しない→開発しないからますます売れないという悪循環に陥り、欧州メーカーとの技術格差は決定的になってしまったのだ。
と誰もが思いはじめていたタイミングで彗星のごとく登場したのがSKYACTIVE-Dである。世界でもっともディーゼルが嫌いな日本人のマインドを見事にひっくり返してしまったSKYACTIVE-Dの魅力とは、いったいどこにあるのだろうか?
まず注目したいのが価格である。2リッターガソリンを積む「20S 4WD」と「2.2XD 4WD」の価格差は38万円。エクストレイルのディーゼルがガソリン車より69万円、パジェロのディーゼルが55.7万円高いことを考えると、価格面でのアドバンテージは明らかだ。
参照)マツダCX-5 価格・燃費・グレード・減税・大きさ
価格上昇をわずか38万円に抑えたキモは、SKYACTIVE-Dのきわめてシンプルな排ガス後処理装置にある。
参照)マツダCX-5最新情報 SKYACTIV-D徹底解説
世界でもっとも厳しい日本のポスト新長期規制をクリアするためには、ススを処理するDPFに加え、窒素酸化物(NOX)を減らす尿素SCRやリーンNOx触媒といった高価な装置が不可欠とされてきた。実際、日産と三菱はリーンNOx触媒を、メルセデス・ベンツのEクラスとMクラスのディーゼル車は尿素SCRを搭載している。それに対し、SKYACTIVE-Dが搭載するのはDPFのみ。乗用車用ディーゼルエンジンとしては世界で最も低い14.0という圧縮比が、燃焼時に生成されるNOxを減らすことを可能としたのだ。
参照)マツダのディーゼル普及戦略は、石油業界&広島大学との共同作業!
参照)マツダCX-5開発物語 広島発クリーンディーゼルへの挑戦!
それでもガソリン車と比べれば40万円近く高いのは事実。にもかかわらず7割を超える人がSKYACTIVE-Dを選択しているのはなぜか? 実は、いろいろ調べていくとSKYACTIVE-Dを選びたくなる理由が次々に浮かび上がってくるのである。


38万円という価格差はあるものの、クリーンディーゼルにはハイブリッドと同じ100%減税が適用される。加えてクリーンディーゼル補助金が18万円出るため、SKYACTIVE-Dの優遇額は最大で37万6700円となる。
一方、ガソリンエンジンのSKYACTIVE-Gはエコカー減税が50~75%で、10万円のエコカー補助金を足しても最大で20万4500円。クリーンディーゼル補助金には6年保有縛りが生じる(縛りが嫌なら10万円のエコカー補助金も選択可能)が、優遇をフルに活用すれば実質的な価格差は約20万円に縮まる。
参照)マツダCX-5ディーゼルは補助金&減税で★40万以上お得★
次に、20万円の初期投資の差をランニングコストと関連づけて考えてみよう。実用燃費をJC08モード燃費の8掛けと仮定し、レギュラーガソリンがリッター160円、軽油がリッター140円とすると、7万8000㎞走った時点で“元が取れる”計算になる。厳密には自動車税と、グレードによっては自動車重量税も違ってくるが、7万8000㎞以降はSKYACTIVE-Dユーザーの懐に1㎞走行あたりおよそ2.5円ずつチャリンチャリンと転がり込んでくるというわけだ。
参照)マツダCX-5ディーゼル 燃費コストはプリウスレベル!
したがって、それほど距離は走らないという人はSKYACTIVE-Gを選ぶのもいいだろう。とくにウェイトの軽いFFモデルはガソリンエンジンとの相性がよく、ディーゼルモデルでは味わえない軽快な走りを演じてくれる。
参照)マツダCX-5試乗記㊵ 街乗りにはガソリンモデルがおすすめ?!
逆にディーゼルとFFの組み合わせは、420Nmという強大なトルクを十分に消化しきれていないことを感じさせる場面もあった。普通に走っている分にはまったく問題ないのだが、たとえばステアリングを切り込んだ状態で強めの発進をするようなケースでは、トルクに耐えかねた前輪が一瞬空転する(すぐに制御が入るが)ことも。4リッターエンジン並みのトルクを発生するSKYACTIVE-Dの能力を引き出してやるには、オススメしたいのは4WDである。
参照)マツダCX-5試乗記㊳ 車好きなら乗るべき『ディーゼル=スマートフォン』
細かい試算までしてどっちが得かを考えてみたものの、僕としては少々の出費の差など気にならないくらい、SKYACTIV-Dのパワーフィールに惚れ込んでいる。ディーゼルエンジンの常識を覆す静粛性とスムースな吹け上がりに加え、SKYACTIVE-Gの2倍以上のトルクをわずか2000rpmで発生する特性は、CX-5にクラスを超えた異次元の速さと余裕と楽しさと快適性を与えている。
参照)CX-5ディーゼル=45km/hでも楽しめるエンジン!/CX-5ディーゼル:走りの秘密は2つのターボ
たとえばガソリンの2リッター直4と4リッターV6の2種類があったとして、実質的な価格差が20万円だったら貴方はどちらを選ぶだろう? しかも4リッターV6のほうが燃費が良いとしたら? 答えは明白だ。冒頭で述べた「73%のユーザーがSKYACTIVE-Dを選択している」という事実の背景には、損得勘定だけでは割り切れないユーザーの想い、つまり「気持ちのいいクルマに乗りたい」という意思が潜んでいるのである。
参照)マツダCX-5スクープ!ディーゼルは「エコ」と「走る歓び」を両立!


シャシーも、そんな欲求にしっかりと応える仕上がりだ。クイックなステアリング特性やアクセルペダルの早開き特性など、表面的なスポーティーさを高める演出は一切されていない。しかしその分、切れば切っただけ曲がり、踏めば踏んだだけ加速するという素直さはピカイチ。自然なドライビングポジションや高速走行時の頼もしい直進安定性、しっかり感としなやかさを併せもつ奥行きのある乗り心地、優れたパッケージング、先進安全システムなどを含め、CX-5には噛めば噛むほど味わいが増す要素がたくさん詰まっている。自分のクルマとして所有すれば、ディーラー試乗では感じ取れなかった長所が次々と伝わってくるに違いない。
参照)CX-5:世界最速アイドリングストップ/CX-5:SKYACTIVボディ/CX-5:衝突回避システム
気になったのは、ワインディングロードを速めのペースで走ったときの操舵力/保舵力が重すぎること。これはフロントの重いSKYACTIVE-Dで顕著に現れる。アシスト量を減らすことでステアリングインフォメーションを高めるのが狙いなのだろうが、とくに0.5Gを超えるような領域では男性でもちょっと負担に感じるほど重くなり、壁感とまでは言わないが、結果としてステアリング切り込み量が不足気味になりステアリングワークが一発で決まらない傾向があった。軽さとインフォメーションの両立はなかなか難しいが、今後のチューニングでさらに詰めていって欲しい部分だ。
純正ナビゲーションが2DINサイズの既製品にとどまるのも不満な点。機能面では何ら不足はないのだが、インテリアデザインとの調和という点では落第だし、何より米粒のような操作ボタンは扱いづらい。インテリアと完璧に調和した専用デザインの扱いやすい純正ナビの開発を望みたいところだ。インテリアカラーがブラックの1色のみというのも寂しい。
参照)マツダCX-5試乗記㊴ CX-5は無難で個性がなくてツマラナイ???
というわけでいくつか注文もあるが、CX-5が目を見張るような魅力を数多く備えたモデルであるという事実に疑問を差し挟む余地は一切ない。
参照)マツダCX-5試乗記㊲ CX-5発「クリーンディーゼル時代の幕開けじゃ」
僕が買うなら迷わず全部入りのXD L パッケージの4WDを選ぶ。価格は300万円を超えてくるが、なーに10年乗るつもりなら多少の価格差などさして大きな問題にはならないし、10年乗ってもいいなと思わせるのがCX-5の魅力なのだから。
マツダ【CX-5】の試乗レポート一覧はこちらから
マツダ【CX-5】の基本情報は、こちらから
マツダ【CX-5】の実燃費情報は、こちらから
マツダ【CX-5】の発売後情報一覧は、こちらから
マツダ【CX-5】の情報一覧はこちらから
マツダ【SKYACTIV】の情報一覧はこちらから
- 同じカテゴリの記事
-
- マツダ「CX-8」改良で2.5Lターボと2.5LNAエンジンを追加 → 11/29から発売開始! (2018/11/09)
- マツダ「新型CX-5」11/22発売へデザイン&スペック公開!2.5Lターボ初搭載! (2018/10/19)
- マツダ「新型CX-5ターボ」はディーゼル同価格?CX-9の2.5Lターボ搭載モデルを追加へ! (2018/09/20)
- マツダ「CX-5」2.5Lターボ追加 & Apple Carplay対応で9月発表!年末に特別仕様車も! (2018/09/09)
- マツダ「新型CX-5」は目標2.5倍受注も出足微妙...3列シート「新型CX-8」にも不安か? (2017/02/05)
- マツダ「新型CX-5」発売間近:日本仕様のデザインや特徴は?公式動画&デザイン画像も! (2017/01/27)
- マツダ「新型CX-5」発表:デザイン&走りが進化しディーゼル価格は277万円〜で2/2発売! (2016/12/16)
- マツダ「新型CX-5」生産開始で実車画像公開→やっぱりカッコいい?17年2月に日本発売! (2016/11/30)
- マツダ「新型CX-5」発表:新魂動デザインを先行公開→GVC搭載で来年2月に日本から発売! (2016/11/28)
- 【更新】マツダ「CX-5」が生産終了→2月フルモ!現行モデルは大幅値引き&次期モデルはデザイン公開! (2016/10/12)
- 【更新】マツダ「CX-5」フルモデルチェンジは11月 → 3列SUVのCX-9も来春に日本発売? (2016/09/16)
- マツダ「新型CX-5」の【デザイン画像】&【カタログ】流出→洗練【スマート魂動デザイン】に! (2014/11/16)
- マツダ「CX-5」vsトヨタ「新型ハリアー」を試乗比較!【ディーゼルvsハイブリッド】代理戦争! (2014/07/11)
- マツダ「CX-5」に『2.5Lガソリンエンジン』を追加!『ハイブリッド』投入への布石か? (2013/10/22)
- マツダCX-5納期【6月上旬】:「納期が縮まらない理由=国内生産の91%が海外へ・・・」 (2013/06/08)
- posted: 00:00
- トラックバック(0)
- コメント(0)
- Page Top
Comment
Page Top