マツダCX-5試乗レポート㉟ CX-5ディーゼルはまだまだ世界レベルにない
- 2012-04/21 (Sat)
- マツダ
- CX-5/CX-8/CX-9
以前、CX-5試乗レポート㉝ 世界一のディーゼルエンジン???
というものをご紹介しました。
その際に、
どの視点で世界一と言っているのか?
走行性能での評価をされているようなら、非常に違和感がある。
という指摘をしました。
評価すべきは、
低価格で、燃費と走行性能を両立したこと。である。
と書いたのですが、
今回ご紹介する試乗レポートは、
CX-5ディーゼルの走行性能は、世界のディーゼルを見ると、まだまだだ!というもの。
ちょっと長いですが、ゆっくりご覧ください。(JBpressから)
マツダ「CX-5」はどこが「惜しい」のか
あえて「先端」にしなかったディーゼルエンジンの走り心地
ディーゼルエンジンと言えば、トラックやバスで見かけるように「ガタガタッ」と揺れながら始動して、「ガラガラガラ・・・」と硬い音を響かせながらアイドリングする。これが日本に住む人々のほとんどが抱いているイメージだろうと思う。
ところがマツダの新型車「CX-5」のディーゼルエンジン搭載モデルは、ステアリングホイールの左側にあるスタート/ストップボタンを押し込むと簡単に「火が入り」、そのまま軽やかにアイドリングを始める。ガソリンエンジンの音、振動とほとんど変わらない。
欧州のメーカーが送り出している最新鋭ディーゼルエンジンを積む乗用車たちも、クルマの内外で聞くエンジンの音は低くなっているが、あれは遮音材 でエンジンを包むようにしている効果がかなりある。それらとはちょっと違う。エンジンそのものが発する燃焼の音そのものが抑えられているのだ。
参照)CX-5ディーゼルで気になる【音】と【振動】を生レポート!
燃焼音は柔らかいが、「筋肉」が感じられない
このクルマに積まれているのは、マツダが新たに開発、量産化した「SKYACTIV-D」シリーズの第1作、4気筒2.2リットルのディーゼルエンジン。
その技術的キーポイントの1つは、これまで17~20ぐらいが常識だった圧縮比(シリンダーの中でピストンが最下位置=下死点にある時の容積と、最上点=上死点に達した時の容積の比)を「14」まで落としたこと。
ディーゼルエンジンは、吸入した空気をギューッと押し縮め、それによって温度も上昇(断熱圧縮)したところに燃料を噴き込み、その微小な液滴が気 化したところから一気に燃焼する。ここで燃焼による圧力が急激に高まり、エンジンを内部から「叩く」ので、あの尖った音が響くのである。

その圧縮を控えて、より大きな空間の中で燃焼させるので、燃焼による圧力ピークの波形が尖らず、柔らかい燃焼音になる。「なるほどね・・・」と、 CX-5ディーゼルのアイドリングの音と振動を初体験する中で考えた。私流のクルマの「味見」はこんなふうに始まり、進んでゆくのである。
参照)マツダCX-5搭載SKYACTIVディーゼル徹底解説
付け加えておくなら、ディーゼルエンジンの圧縮比をここまで下げると、外気温が低い時の始動と暖まりが技術的な障壁として現れる。つまり寒冷な空 気を吸い込んでギュッと押し縮めても、そこに噴霧された燃料がパッと気化できる温度にまで上がらない、という状況が起こりうる。
そこでまず燃焼室の中に顔を出している耐熱セラミック製のグロープラグという部品の先端が、エンジン始動時には電熱で瞬時に赤熱化して「火種」になるようにしている。これは今日のディーゼルエンジンの定石。
マツダのエンジン開発陣はSKYACTIV-Dに、圧縮比を思い切り低くするためにもう1つ、「排気2段カム」というメカニズムを組み込んだ。シ リンダーの中をピストンが下降して新しい空気を吸い込むプロセスの中で、一瞬だけ排気バルブを押し開く。すると直前の燃焼の後、ピストンの上昇によってシ リンダーの中から押し出された「燃えた直後」の熱いガスが逆流する。シリンダーの中に少量が戻ってきたこの熱いガスがシリンダーの中の空気の温度を上げ、 着火しやすい条件を作り出すのである。
参照)CX-5開発物語 広島発クリーンディーゼルへの挑戦!

この「寒冷地における始動と暖機」については、さすがにこの時期の日本ではチェックできないので、ぜひ次の冬にまた北海道遠征を企てて、そこでたっぷり確かめることにしようと、今から楽しみにしている。
さてCX-5ディーゼル仕様の「味見」を進めよう。
参照)CX-5ディーゼルvsプリウス:実燃費対決
ATセレクターをDレンジに動かし、アクセルペダルをスッと踏み込む。エンジンがそれに反応して力を増し、クルマを押し出そうとする。その応答は 適度な穏やかさ、と言えるが、オートマチックトランスミッション(AT)の「発進デバイス」であるトルクコンバーターの特性は、長らく日本車の定石となっ ている「滑らせて駆動力を強めよう」というもので、原動機の力感をダイレクトに伝える感触が甘めで、ややルーズに押し出されつつ発進。
そのまま普通にクルマを「転がして」ゆく。少し早い流れで動いているクルマの群れに合流しようという状況などを思い浮かべていただこう。クルマを 押し出す力を強めてスピードを乗せてゆこうと右足を少し深く踏み込む。ここでも「柔らかい」反応に終始する。ちょっと物足りない。人間が脚の筋肉を収縮さ せてクルマに「(後ろへ)蹴る」というイメージを伝えた。そこでクルマの「筋力」を感じれば、「よし、いい感じ・・・」になるのだが、そこがちょっと曖 昧。写真に例えれば、ピントがボケて画像にキレや締まりが足りない感じ。もっとも最近の日本のクルマの多くはおおよそこんな感触なのだが。
ディーゼルエンジンの「先端」を知らない日本
ご存じの方も多いと思うが、ヨーロッパではもう10年以上にわたって毎年販売される乗用車の半分かそれ以上がディーゼルエンジン搭載モデルである。
その選択理由は何よりも「実用燃費が圧倒的に良い」、すなわち「CO2排出量削減」であり、そして「耐久性が良い」など伝統的なイメージもある。
参照)マツダCX-5ディーゼル 実燃費はプリウスレベル!
日本では疫学的裏付けもなくNOx(窒素酸化物)削減ばかりを厳しくした排出ガス規制の結果として、「燃料の噴霧がうまく燃えてくれない」状況で 排出されるPM(パーティキュレートマター:粒子状物質)、つまり排気管から吐き出される黒い煙がディーゼル車のイメージとなって人々に、社会に染みつい てしまった。
だが、欧米ではまず「目に見える排出物質」であるPMを削減、それとバランスするレベルでNOxも減らす、というアプローチをしてきたから、大気 汚染において「悪役」のイメージはない。ここ四半世紀にわたる日本のディーゼル車、特に中大型商用車の排出ガス規制の内容を、ヨーロッパのエンジン技術者 に紹介したら「こんな規制をしたら黒煙が出てしまう。なぜこうしたのか、信じられない」と驚かれたことが何度かある。
ちなみに今、そしてこれから日欧米で施行されるディーゼル乗用車の排出ガス規制は、いずれも今の技術の限界を試すような厳しいものであり、排気浄化のレベルはほぼ世界共通になりつつある。
参照)CX-5が巻き起こすエコカー戦争【ディーゼルvsハイブリッドvs軽】
ただ各国・地域それぞれに「お受験」の走行モードも、その結果が「この範囲に入っていること」と決められる排出物の数値も、独自のルールに沿った ものを要求しているために、ヨーロッパの規制値はクリアできていても、そのまま日本に持ってくると「お受験」に合格せず、また別の開発が必要となる。
ヨーロッパのメーカーのほとんどにとって、その開発と製造のために決して少なくはないコストと工数をかけてまで、わずかな台数しか売れない「日本 仕様」を仕立てる意味が見出せない、というのが本音のところで、日本にはごく一部を除いて「世界の先端をゆくディーゼル乗用車」は上陸していなかったので ある。
かくして日本では、ユーザーの側も、そしてメーカーの側も、これからも自動車用原動機の主流の一派であり続けるディーゼルエンジンの「先端」を知らない、という状況が生まれてしまった。
参照)次世代ディーゼル車は、ガソリン車以上にクリーンで静か
エンジンを肉体の延長に変えるコモンレールシステム

現代の自動車用ディーゼルエンジンは、燃焼室の中に燃料を噴霧するのに「コモンレールシステム」と呼ばれるメカニズムを使っている。1000分の1秒単位で開閉する注射器のような噴射弁を組み込み、その開閉を電子制御するものだ。
燃焼室の中が何十気圧にもなっているところに、燃料を微細な液滴の霧になるように噴射しなければならないので、注射器や水鉄砲のようにして燃料を 押し出すのに1200~1800気圧もの高圧をかけているし、10分の1秒ほどの短い時間の中で3~5回にも分けて燃料を噴射する、という極めて精密なメ カニズムである。
この「コモンレール」の実用化と進化によって、ディーゼルエンジンは大きな変身を遂げた。特に、ドライバーのアクセル操作に対するエンジンの力の増減。
ちょっと専門的な話(ここまでもそうか・・・)になるが、ガソリンエンジンは空気と燃料を混ぜ合わせた後、その「混合気」に点火して燃やす。これに対してディーゼルエンジンは、空気だけを吸い込んで圧縮したところに燃料を噴き込んで一気に燃やす。
参照)マツダのディーゼルは、石油業界&広島大学との共同作業!
エンジンが回っていればシリンダーには空気が必ず吸い込まれているので、そこに燃料を噴き込めば「力」が現れる。つまりアクセルペダルの操作に対して「力をどう出すか」を、コモンレールシステムの制御で自在に作ることができる。
つまり、最新のディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりも、ドライバーの右足の動きに対する反応が早く、しっかりしたものにできるようになっ た。そしてヨーロッパのメーカーが作るクルマたちの多くは、ちゃんとその「進化」を現実のものにしていて、右足の動き、特に踏み込みに対する反応(レスポ ンス)が良く、しかも人間が扱いやすいように上手に「調教」されていて、「筋力」を実感しつつ操ることができる。今この瞬間、ドライバーとしての自分が欲 しいだけの「力」を、まるで肉体の筋肉の延長のように引き出すことができるのだ。
参照)ディーゼル=45km/hでも楽しめるエンジン!
長々と「最新のディーゼルエンジン」の「筋力」の表現について書いてきたが、要するに、CX-5で初めて世に出たSKYACTIV-Dエンジン は、この「ディーゼルならではの良い資質」において、世界の今日的先端レベルにはまだ届いていない。ここが説明したかったわけだ。
参照)マツダCX-5ディーゼルは、世界一のディーゼルエンジン???
なぜあえて「角を矯めて」しまったのか
開発最終期の車両をテストコースで体験した報道関係者の話を聞くと、当時はもう少し「最新のディーゼルらしい」反応を見せたという。
参照)CX-5シーゼル開発車に試乗:ディーゼルの超絶進化
どうやら市販 直前になって、日本の反応のぼやけたガソリンエンジンとルーズなAT(CVTも)の組み合わせしか知らない営業・販売サイドから「運転しにくい」というコ ンプレイン(文句)が出て、あえて「角を矯(た)める」特性に躾(しつ)け直した、ということのようだ。
参照)CX-5ディーゼルはオーバースペック?
こう言っては何だが、日本企業のそうした部門の人々、そしてトップマネジメントは「クルマを知らず」「運転とは『ヒト~クルマ』のどんな関係を組 み立てるものか」も分かっていない人々ばかり。もちろん個々のユーザーもそうなのだが、そうした人々が新しいクルマと生活を始めて、早ければ2~3日、遅 くても数カ月で「クルマが持つ資質」に身体が「馴染む」。
今の日本の路上に見る「普通の人々」の運転が非常に粗雑なのは、クルマ側の責任なのだ、と私は考えている。
我々はどんなクルマに乗っても「こうあるのがいちばん良い」というクルマの運動を作り、力の使い方を組み立てているのだが、私にとってそれが簡単 にできるクルマは、一般の方々が乗って運転しても、身体と感覚が馴染むにつれて、自然に良いドライビングになってゆくし、同乗者にとっても快適な移動にな るものなのだ。
その意味で、あえて「角を矯めて」しまったCX-5のパワーユニットの反応、「筋力」の表現を、私は「惜しい」と思う。
参照)CX-5ディーゼル=女性でも扱いやすいSUV
エンジンが生み出す力の絶対量、その時に伝わる音や振動などから総合的に判断すれば、うまく燃えて、ちゃんと力を作ることができる資質を持ってい る。何気なく「転がして」いる状態から、あえて右足を深々と踏み込んで一気に加速してゆく時の鼓動、エンジン回転速度が上昇してゆく軽快さも良い。
もちろん短い「味見」では実力確認までゆかなかったが、燃費のポテンシャルも高そうだ。特に何百キロメートルかをそれぞれの道のクルマの流れに 乗って走り続けるような移動では、1リットルあたり(もちろん軽油)20キロメートルぐらいの実用燃費が出そうだ。これもこれから何度か試乗の機会を作っ て確かめてゆこうと計画を立て始めているところ。
参照)CX-5ディーゼルはプリウスよりECO&FUN
参照)マツダCX-5ディーゼル:実燃費を計測→20km/L超!
それだけに「筋力」の仕立て方を含めた最新ディーゼルエンジンでクルマをどう走らせるか、その煮詰めが甘いのは、何とももったいないと思う。
しっかりとした感触に欠けるシートとステアリング
もちろんクルマの「味見」は動力源との対話だけで済むものではない。今回はそこがマツダという企業にとっても明日(のビジネス成果)に直接つなが る最重要ポイントだったから、まずはそこから・・・になったにすぎない。むしろ動力源のエンジニアリングはどうでもよく、ちゃんとした「筋力」を持ち、も ちろんそれをできるだけ少ない燃料消費で実現しているかどうかが大切。参照)マツダCX-5 マツダのディーゼル戦略
それにも増して大切なのは、乗る者の身体に触れ、体を包む空間の資質、そしてその空間が自ら走ってゆく時のリズム、フットワーク・・・。これがつ まり「移動空間としての資質」であり、私流に言えば「クオリティー・オブ・ダイナミクス(動質)」という、移動体であり、工業製品である自動車にとって最 も重要な「品質」の核心なのである。
ではCX-5の「動質」はいかに・・・?
これも全体的な印象としては「惜しい」。もちろん、動質において惨憺たる状況に安閑としている日本車の多くと比べれば、素直な動きを示すクルマで はある。しかしそれは「日本車の中では」という狭い範囲の相対評価であって、「世界最良の動質」を目指してクルマづくりを続けている全世界の量産メーカー の「現時点で最良の製品」、例えば普通のゴルフなどをベンチマーク(比較基準)として検討するのが私のスタンスだし、マツダはもちろん日本の自動車メー カーのものづくりも、そこに立脚していなければ、世界市場でビジネスを展開し、成功することはおぼつかない。
CX-5のキャビンに身体を収めて最初に「惜しい」と思うのはまずシート。身体にフィットする基本的な立体形は悪くはないのだが、クッションと表 皮が体重を受け止め、走るクルマの中で人体を支えるしっかりとした感触に欠ける。いかにも「コストを削りました」という座り心地だ。マツダの通例どおりで あれば、サプライヤーはデルタ工業だろうか。シート開発・製造の実力はまだ世界レベルには届かないのかな。
参照)CX-5ディーゼル運転席周り超詳細ムービー
動き出して、まずクルマの進む方向を決めるべく手を動かし、ステアリングホイールからタイヤへとドライバーの意志を伝えるのだが、このステアリン グの手応えにも最初からひっかかるような感触が混じる。操る手には「雑味」として伝わるものが多く、タイヤが「仕事をしている」感触が希薄だ。
ここは(も)私の専門分野の1つなのでもう少し詳しく書くと、手からタイヤまでの間に組み込まれている歯車やモーターの「機械としての精度」が低く、さらに電動パワーアシストの特性の「仕込み」が煮詰めきれていない。
実は「電動パワーステアリング」は、滑らかに、自然な感覚で操ることができる操舵系を実現するのは極めて難しいメカニズムなのである。「お受験燃 費」の数値を引き上げる効果は大きいのだが。なぜならば燃費と排出ガスを計測する試験では、クルマはシャシーダイナモという試験台の上で、大きなローラー を車輪で回すだけ。一度もステアリングは動かさないのだから。
このステアリングのサプライヤーはジェイテクトであって、メカニズムそのものはトヨタが中型サイズのFF車に使い続けているタイプ。決して「現在、世界最良」のものではない。
ジェイテクトにも「世界最良」を実現しうる新製品はある。もちろん開発と製造のために新規投資をしているから既存品同等か、若干のコストアップに なるのだろう。昨今、日本の自動車メーカーはひたすら「コスト、コスト」であって、機能や性能の向上には目を向けない。「もっと良いクルマ」を作れそうで も、わずかな(ほんとに何円レベルの)コストアップがあれば背を向けて、旧態依然たるクルマづくりに閉じこもっている。
参照)マツダ「CX-5」 クリーンディーゼルは“安い、きれい、軽快”
コスト削減でフットワークも犠牲に
クルマのフットワークの全ての「味」を決めると言ってもいい、何より重要な部品は何かご存じだろうか? それはまず「タイヤ」であり、そして「ダンパー(ショックアブゾーバーと呼ぶ向きもあるが「ショックを緩衝する」ものではないので、この呼び方は不適切。 ちなみに力や荷重を受け止め、緩衝するのはバネの仕事)」である。
CX-5のフットワーク、タイヤが路面をとらえてクルマがまっすぐに走り、そして曲がり、その上で車体が揺れ、傾いては戻る。この動きの全てをおっとりとしなやかに、という造り手の意図は伝わってくるのだが、脚の伸縮、車体の揺れの動きは全体に締まりがない。
だからといって締め上げればいいわけではない。柔らかく伸縮しつつ、無駄な動きを消してくれる「良質な」ダンパーを組み込み、徹底的に走り込んでチューニングしていれば、このフットワークの質感はまったく変わる。
もちろんタイヤにも、見た目性能、特にお受験燃費のために「よく転がる」ことばかりを求めず、路面に触れてたわみ転がる中での「良質さ」に目を向 ければ、そしてユーザーの手に渡ってから何万キロメートルも走る中で履き替えることを考えれば、CX-5の新車装着タイヤの選択はまったく別のものにな る。
CX-5のダンパーのサプライヤーはショーワと日立オートモーティブシステムズの2社で、前後に異なるメーカーのものを組み込んでいる。ダンパー の微妙な特性はメーカーによって違う(そのくらい微妙、しかし人間はちゃんと感じる、というデリケートなパーツなのである)ので、1つの車両の中に異社の 製品を組み込むのは脚の伸縮の微妙なリズム、フットワークの「統一感」を仕上げるためには「禁じ手」と言ってもいい。
できればZF-ザックスのダンパー、ミシュランのタイヤで仕上げてみたい、と思いながら走らせていた。もちろん日本のサプライヤーでも同じレベル の(感触は異なる)動質が実現できないわけではない。しかしダンパーメーカーの人々は「我々にもザックスのような質感のダンパーは作れます。(自動車メー カーに)1本あたりあと10~30円のコストを出してもらえれば・・・」と言う。
タイヤの方は、日本のクルマづくりの中で、コスト削減とともに燃費性能や走行性能の辻褄を合わせるのに、それぞれの車種に専用のタイヤを作ること がいつの頃からか定石になってしまった。この悪しき風習もそろそろケリをつけないといけない。ユーザーは、新車に装着されてくるのと同じ仕様、特性のタイ ヤをアフターマーケットでは購入できない、という状況になってしまっているのだから。
マツダが「世界レベルの良品」を造るために必要なこと
CX-5を味見しながら、その「動質」について掘り下げてゆくと、クルマづくりを、そして動質の仕上げを直接手がけた人々の想いや力量よりもむし ろ、周りからあれこれ言う「企業内素人」の干渉、そして何よりも「調達部門」がクルマづくりに設定した彼らだけの論理による条件が、このクルマの資質をス ポイルしているのではないか、という仮説が浮かび上がってくる。
もちろん日本のメーカーの現状はどこも同じようなものであって、それが日本車全体の資質を「新興国並み」に低下させつつあるという極めて深刻な状況に、この産業を動かし、支え、取り巻く人々の目が向かないと、日本のクルマはさらに惨憺たる状況になる。
マツダの場合は、エンジンを核に自動車を形づくるエンジニアリング全体のリニューアルに着手した。それは、彼らが今の、そして直近の自動車産業の中でよって立つ足場を確保するために、今この時に必須の戦略である。これ以上遅れたら次に来る危機はさらに深いものになる。
しかし、CX-5というプロダクツからは、前から続く体質がその新しい展開の「足を引っ張る」可能性も浮かび上がってくる。一律にコスト目標を算 定し、それに応ずるサプライヤーだけに絞り込み、製品の資質をスポイルしようともその「既定路線」に固執する、というやり方はかつてアメリカ流の表面的合 理主義が正義だとしたものである。そこに突っ走ったアメリカの自動車メーカー自身がもはやそれでは競争力の高い製品は造れない、ということに直面し、変化 を始めている。
もちろんこの産業に新規参入してくる「安ければ何でもいい」型の製品を大量に提供するものづくりであれば、それでも何とかなりはする。しかし韓国勢などは、逆に「世界最良の要素技術」を供給しうる欧米のサプライヤーと密接に協力する体制を整えている。
マツダだけでなく日本の自動車メーカーの全てにおいて、既定のコスト最優先思考、それも実は世界バブルの中で「合理主義」だとされた方法論を日本的に翻案したやり方から脱しないと、世界の様々な市場のユーザーが「良質さを実感して選ぶ」クルマは造れない。

CX-5というプロダクツの現状が、それなりの素質はあり、しかしここから開発と改良を積み重ねてゆかないと「世界レベルの良品」に育てることは できないというものであるだけに、その将来は、そしてマツダという企業全体の明日は、技術そのものの進化に加えて、それを現実の製品とするまでの間接部門 の意識と方法論の改革にかかっているのだな、と実感した。
幸いにして、このクルマを、世界のどこに持っていっても「良品」と評価される資質にまで仕上げたい、という「熱さ」と能力とイメージを持つエンジ ニアが育ちつつある。そういう人物がほんの何人かいて、存分に「仕事」ができれば、クルマという工業製品はまったく別モノになるのだ。私は、それが実現す ることを心から期待している。
少なくとも、ヒトの肉体に直接触れ合い、クルマとの間をつないで運動をコントロールする要素、すなわち「シート」、そして「ステアリングメカニズ ム」と「ダンパー」と「タイヤ」は、「ただただコストを切り詰める」ことの対象から外すこと。私はこのところずっと、自動車を企画し、考え、作り、売る 人々に対して、そう言い続けている。
*********引用ここまで*********
比較相手が「世界最高峰の車」なので、
200万円台の普及車を作ろうとしているマツダからすれば、
ちょっとお門違いじゃないか。との評価視点だとは思いますが、
少なくとも、現時点での日本車のレベルがわかる内容ですね。
そして、簡単にCX-5試乗レポート㉝ 世界一のディーゼルエンジン???
なんてことは言えないことがよくわかると思います。
色々な視点での評価がある中で、
モータージャーナリストなど、車のプロの方と、
一般の方の試乗レポートの内容が異なる、という事を書いたと思うのですが、
今回、ご紹介した試乗レポートで「走りはまだまだ」と紹介された走行性能も、
一般の方にすれば、ちょっとオーバースペック。と逆の評価をされることもあります。
そもそも、日本の道路事情と、欧州の道路事情は全く異なるもの。
世界でトップレベルの性能を持つ車も凄いのですが、
日本人が日本で使いやすい、乗りやすい車。という視点も非常に大切。
みなさんはどのようにお感じになったでしょうか。
CX-5ディーゼル絶好調 ⇒ デミオ・アクセラにもディーゼル導入?!
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Comment
記事が読み辛く、そのせいもあってとても信用性に欠けるレビューだという
不信感を抱く結果となっている様に感じる。
これだけ多くの主張が、まとまりの無さに繋がっており、
また逆にこれだけ多くの主張をしたいのであれば、
ブログスタイルの変更をオススメします。
(=読み手に対する読み易さの意識を高める事を
重要視してはどうでしょうか)
2013-05/19 01:16 (Sun)
マツダのスカイアクティブDが他社に対して優位な点は排気NOx後処理が不要な点とそれによる軽量化(補器類に由る)、低圧縮比によるエンジンブロックの軽量化と製造コストの改善です。
純粋にディーゼルエンジンの出来について語りたいのかCX-5という車の完成度について評価したいのかがイマイチよくわからない記事です。
2013-06/03 01:11 (Mon)
信頼度の低い、評価ですね。疑問です。
2013-10/03 15:47 (Thu)
技術的な部分の評価を挙げておきながら、
最後は味付けの好みの問題やコスト上の妥協点を取り上げて
煮詰めきれて無いと結論付けるって。
ベンツでも買っておけと。
2014-02/24 19:06 (Mon)
上から目線かつ独善的な評論ですね。
こんな論評をしているから日本の自動車文化が育たない。
それが分からないのが悲しい。
2014-06/26 21:02 (Thu)
cx-5の評判をよく思わない人達に共通して言いたいんですけど、販売価格考えてから、もの言ってもらえますか?
ヨーロッパの最先端のディーゼル?じゃあ、同じ値段の車を出して、比べてみて下さいよ。
あ・・日本の厳しい規制に通る車がないか・・w
2014-07/20 15:22 (Sun)
あなたは何ものだ
2014-10/12 22:30 (Sun)
私は貧乏人なので、ベンツのEシリーズなどと比べるすべもありません。
どのようなクルマを作るにしろ、コストとの兼ね合いでしょう。
売価に対するパフォーマンスがどうかということです。
こんな人はレポートを書く資格が無いなぁ。
2015-03/17 11:43 (Tue)
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