日産自動車が三菱自動車と共同で開発を進めてきた新型車が、いよいよお目見えする。日産から「DAYZ(デイズ)」「DAYZ ハイウェイスター」(=タイトル下写真=)、三菱自から「eKワゴン」「eKカスタム」の各シリーズとして、6月に発売されるワゴンタイプの新型軽自動車だ。発売に先駆けて、このほどデザインを先行公開した。
軽自動車は12年に国内新車市場全体の37%を占めており、エコカー補助金が切れた後も比較的堅調な売れ行きを続けている。その有望市場に投下する「DAYZ」シリーズは、日産にとって軽自動車戦略の転換点を象徴するクルマだ。
三菱自側の車名から分かる通り、この新型軽はこれまで三菱自が生産し、日産へは「オッティ」のブランドでOEM(相手先ブランドによる生産)供給している「eKワゴン」の後継モデルとなる。
日産テイストのデザインを表現
これまで日産は三菱自からOEM供給を受ける際、車体の外観を若干変更する程度にとどまっていたが、「DAYZ」シリーズの外観を見るかぎり、日産はデザインテイストなど独自性を持たせるように踏み込んだ印象を受ける。
それもそのはずで、「DAYZ」「eK」シリーズは、日産と三菱自が2010年に折半出資で設けた開発会社NMKVが、商品企画から設計・開発を担当している。生産は従来どおり、三菱自の主力工場である水島製作所(岡山県)が担当するが、部品の調達や生産技術面を中心として、日産側が大きく関与した。
日産は三菱自のほか、スズキからも軽自動車のOEM供給を受けている。だが、他社に開発を頼ってきた現状で、日産は昨年、国内シェアでホンダはおろか、スズキ、ダイハツにも抜かれ5位にまで後退した。それだけに、日産みずからが初めて積極的に開発に関与した軽自動車が投入されるのは、国内販売店にとって待望であり、その成否は今後の国内販売の行く末を占う試金石となる。
自動車メーカーにとって異例ともいえる、発売3カ月前のデザイン公開には、新車の投入間隔が空いている「タマ切れ」の間に、少しでも顧客離れを食い止めたい、という狙いもありそうだ。
スズキからのOEM供給は順次縮小
ただ、日産は三菱自との提携強化に伴い、スズキからのOEM供給を順次、縮小していく見込み。すでに、スズキ「パレット」のOEM「ルークス」は、3月のモデルチェンジを機にOEMが終了する。ルークスは、同じくスズキ「MRワゴン」のOEM「モコ」と並ぶ日産の主力であり、短期的な販売に与える影響は大きい。
一方、リコール隠しなど経営問題も抱える三菱は、国内シェアわずか2.6%と存在感の低下は著しい。それだけに国内市場の挽回策として新型軽には期待がかかる。
三菱自にとっては生産台数の底上げに期待がかかる。三菱自は軽メーカーにもかかわらず、軽の販売シェアはわずか4%。OEM販売の日産の7.7%にも差を付けられている。日産への供給を増やすことができれば、生産台数は拡大、大幅に落ち込んでいるラインの稼働率が改善する。さらに、日産の調達力も生かせるとなれば国内事業の立て直しに追い風だ。
日産・三菱連合は、今回に続く共同開発の第2弾として、さらに車高が高いスーパーハイトワゴンを14年初頭にも投入する方針だ。このクラスは、ホンダが「NBOX」で一気に市場を活性化させた有望な市場。矢継ぎ早の新型車投入で存在感の低下に歯止めを掛けたいところだ。
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