軽自動車市場でホンダ「NBOX」(=タイトル下写真=)の旋風が止まらない。2013年1月の販売台数は2万0552台と、2位の「ムーヴ」に約5377台の差を付けて4カ月連続の1位を記録。エコカー補助金があった昨年7月以来の2万台を回復した。
ダイハツ工業の主力車種として昨年末の大型改良をしたばかりの「ムーヴ」でさえ寄せ付けないNBOX。軽乗用車としてはもっとも背が高いトールワゴンで、1.7メートルを超える車高を武器にした車内空間の広さが、ファミリー層を中心として人気を呼んでいる。
そんなNBOXの快進撃に一矢報いるか、と注目を集めているのが、スズキが2月下旬に発売を予定する新型ワゴン「スぺーシア」だ。NBOXと同じ車 高1.7メートル超のトールワゴンで、後席をスライドドアとした設計である。関東地方の人間には何やら日光方面へと向かう某鉄道会社の特急電車を思わせる 「スペーシア」の車名は、まさに車内「スペース(空間)」が広いという特徴を強調するネーミングだ。
「パレット」の後継車種で登場
このスペーシアは、現在、スズキが同じカテゴリーで展開する「パレット」の後継車種。通常ならばフルモデルチェンジ(全面改良)するところだが、あえて既存のブランドを廃し、新車名で挑むところにスズキの本気度を感じさせる。
パレットは、トールワゴン人気の先鞭を付けたダイハツ「タント」の競合車種として2008年投入されたものの、タントの牙城を崩せなかった。そうこうするうちに、伏兵であるNBOXの登場でさらに苦戦を強いられていた。
直近の月間販売台数では、NBOXが1.7万~2万台、タントもモデル末期にもかかわらず1万~1.3万台なのに対して、パレットは 3000~5000台程度にとどまっていた。パレットは日産自動車へのOEM(相手先ブランドによる生産)車が「ルークス」として販売されているが、両者 を足しても6000~8000台程度と差を付けられている。軽の人気カテゴリーに育ったこのクラスでの苦戦は、「ワゴンR」に頼らざるを得ないスズキの軽 市場でのシェア減退の一因ともなっている。
新型ワゴンRで培った技術を全面投入
スペーシアは、昨年に投入した新型ワゴンRの技術を全面的に投入し、競争力の回復を図っている。車体には超軽量・高強度の鋼材を採用して軽量化、ま た、減速時のエネルギーをバッテリーに回収し電装品の駆動に利用する「エネチャージ」や、ブレーキ時の時速13キロメートル以下からのアイドリングストッ プといった機構を採用。大幅な燃費向上を行った。車内空間では、床高を下げるなどして広さを強調。またフロントピラーやダッシュボードのデザインを変更し て開放感も高めたものとなっている。
「NBOXは乗用車メーカーならではの良いクルマ。でも後出しジャンケンで負けるわけはありません。NBOX購入はちょっと待ってほしい」と東京都 内のスズキ販売店担当者の鼻息は荒い。ホンダの躍進で下克上となった軽トールワゴン市場。真打ちの登場で、ますます激しい火花が散ることになりそうだ。
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